メトとレコ・番外編『屋上』




 犬人と猫人が一つどころに暮らしながらも、一方がもう一方を弾圧する村―――ドギークラウン。いつもと変わらず、二つの種族の間には険悪な雰囲気が流れていた、そんなある日。

 ドギークラウン唯一の学校……昼休み直前の授業中。
いつものようにメトは親から渡されたわずかばかりの昼食代を握って、教室後方のドアをにらみつけていた。購買部なんてのも無いわけではないのだが、文具がメインで食料など置いてあるはずも無く、よって校舎に併設されている小さな食堂が弁当を持ってきていない者にとってのエネルギー供給源となるのである。
 しかし、弁当を持ってくる者は意外に少なく・・・急がねば席は埋まってしまい、昼休みの大半は食堂で過ごすこととなってしまう。
元気たっぷり活動的なメトにとって、それだけは避けたい事態。

ジリリリリリリリリ……! ガタッ!
「だぁーっ!!」
 と言うわけで授業終了のベルが鳴るか否や、まるで飢えた狼のように(実際飢えているわけだが)ドアに向かってメトは飛び出した。
 何者の追走も許さず、他にも同じように狙っていた者を出し抜き、真っ先にドアに手をかけようとしたところで、
「ぐぇっ!?」
急にメトはパーカーのフード部分を掴まれて、つんのめった。そして、これぞ千載一遇のチャンスと言わんばかりに出遅れた者達が我先にと駆け出していく。

「あぁあ……お、俺のトマトソースがけ鳥の照り焼き定食……!(370オル)」
 うらめしげな言葉を吐きながら、誰に邪魔されたのかと未だ引っ張られる感じがする背後に振り向くと、そこはもじもじとした様子のレコが居た。
「レコ? なんで邪魔すんだよ……」
意外な人物に邪魔された事に多少の驚きを覚えながらも、不機嫌を隠さずにメトは言う。ちなみにレコは弁当組である。
「ご、ごめんねメト君。 あの、今日お弁当作りすぎちゃったから……一緒にどうかなって思って……」
二人が種族間を超えて仲が良いことはもはや周知の事実だが、学校での二人はあまり接点を持たない。プライベートな時は呼び捨ての名前も、周囲に人が居るときはちゃんと「君」を付けている。

 そんなレコが、学校で、人前で、気恥ずかしそうにしながらも、自分に話しかけてきた理由は弁当だと言う。断らぬ理由は無かった。(昼飯代が浮くし)
「……もちろん食べる!」
先ほどの不機嫌はどこへやら、瞬く間にメトの顔は子供らしく単純に笑顔へと変化した。つられてレコもはにかんだ笑みを見せる。
「えへへ……それじゃ、どこで食べるの?」
「えーっと、じゃあ屋上にしようぜ」
 さすがにここで仲良く食べるのは気恥ずかしいのか、レコはあたりを少しだけ見回してから尋ねてきた。まぁ恥ずかしいのはメトも同じなので、手っ取り早く屋上を提案する。
そこならクラスの人もいないだろうし。
「うん。 今日は天気がいいしね」
「ああ。 気持ちいいぜー」
二人はそんな他愛のない会話をしながら教室を出て、屋上へと向かって行った。


 学校屋上……何台かのベンチが置いてあり、高いフェンスに囲まれているとは言え村を一望できるこの場所は、憩いの場として使われることが多い。ゆえに、当初の予測よりも人は居たわけだが、自分たちのように、異種族の取り合わせがほとんどと言う空間だった。
 実際はもっと少なくって、人目をあまり気にすることもないだろうなーと思っていたけれど、ここまで居ると思って無くて、ちょっと恥ずかしい。
けど、どっちにしろ人目を避けてここの人達も来てるんだろうし・・・と、そこまで考えいたったところで、空いているベンチを見つけて、レコが手招きした。
「こっちこっち」
「ああ」
 早速ベンチに隣り合って座ると、渡された布包みを開けて見る。中には隣のレコのものと比べると多少大きめの弁当箱が入っていて、わざわざ自分のためにこの弁当箱を用意してくれたのだと察しが着いた。

 そしてその中身は……
「おぉ、結構うまそうじゃんか」
派手と言うわけではないが、色とりどりの食物がきっちり詰められたそれはレコの性格を現しているかのようだ。とりあえず、端っこのから揚げをつまんで一口。
「ん……」
「ど、どうかな……?」
ちょっと緊張しつつ、やや上目遣いで隣のメトを凝視するレコ。その膝の上に広がった弁当は、感想がどう出るのか集中している彼の眼に入っていない。
「……うまいな、これ」
 作り立てではないと言うのに、噛んだら柔らかく、肉汁があふれて来た。レモン風味なので、後味がさわやかだ。これをまずいという奴はいないだろう。
「ホント? 犬の人と味覚が違うかなーって心配だったけど……よかったぁ……って、あわわわ……!」
笑顔のメトにつられて、緊張で固まっていたレコの顔も破顔する。と、ほっとしたところで自分の弁当が膝からずり落ちそうになっているのに気づき、あわてて受け止めた。
「いや、でもこれマジでうまいぜ。 ひょっとすると食堂のよりもうまいかも」
がっつがっつがっつがつがつ……
「ありがと……ってそんな勢いつけて食べなくても……」
はむ……むしゃむしゃ……ごっくん
 勢いよく中身を口に詰め込んでいくメトを苦笑いしながら見つめ、レコも控えめに食べ始める。そんな食べ方の違う二人では、速度に差が出るのも当然で、大体レコが半分食べたところでメトはほぼ全てを平らげていた。

「ごちそーさま!」
「ふふ……お粗末様」
 数分後、あっという間に食べ終えたメトは箸を弁当箱にしまい、レコに促されるままに空箱を渡す。
「よっと……」
「げっふぅ……」
お腹にたっぷり詰め込んで満足したのか、レコが一時食事中断して弁当を元の布に包んでいる横でメトは盛大にげっぷを吐いた。
「もう、行儀悪いんだから……」
咎める様な口調ではあるが、そんなメトを嬉しそうに横目で見ながらレコは再び箸をすすめる。
「固いこと言うなって……ふぅ」
 いつもであれば食べ終わったら食後の運動!と言わんばかりにすぐさま運動場に飛び出すメトであるが、今日はそんな素振りを見せず、レコの隣で大きく息を吐き出してベンチにもたれた。
「に……遊びに、行かないの?」
そのことを知っているレコは、隣で食休みを取っているメトの様子を不思議に思って尋ねてみる。
「それは……その、折角お前と一緒に居るのに、どうして行かなきゃならないんだよ」
少々ためらうような間があったが、メトはそっぽを向いて一気に言い切った。耳のかすかに見える皮膚が赤く染まっていることから、照れくさいのだろう。
「え? え……」
一瞬何を言われたのか理解できなかったレコだが、すぐにその言葉の意味を理解すると、顔を真っ赤にして黙ってしまった。

「ええと……お前さ、多く作りすぎたっての、嘘だろ?」
 照れ臭さをごまかすように、話題をすり返る。このまま気まずいような、恥ずかしいような雰囲気じゃ、楽しい時間がドキドキしてるだけで終わってしまう。しかし、そんな彼の考えなど知らないレコは、顔を赤くしたまま黙ってうなずいただけだった。
「……いつも一人で作ってる奴が今日に限って多く作るなんて変だと思ったよ」
現在一人暮らしのレコは、言うまでもなく自炊だ。少ない仕送りを受け、幼いながらもその中で見事にやりくりする様をメトは知っている。料理の分量まできちっとしているレコが作りすぎると言うことは、可能性としては低かった。
「いつも……」
「ん?」
 こちらをやや上目遣いで見ながら、蚊の鳴くような声でぽつりとつぶやき始めるレコ。
「いつも、メトは……食堂で食べてるから、その、たまには……」
 最後は消え入りそうな声で最早聞き取ることが出来ず、言い終わったと見るや再び弁当に視線を向け、いそいそと中身を口に押し込んでいく。その顔は体毛を通しても分かるほどに赤らんでおり、互いの恥ずかしさを和らげようと言うメトの目論見は完全に失敗したようだ。
 しかし、彼が自分を想って作ってきてくれたことはメトにも理解できて、照れ臭さが高まる中で、一言。
「俺のために、作って来てくれたんだよ、な?」
「……うん」
「ありがとな」
はっきりとうなずいたのを見て、メトは照れ隠しにぐりぐりぐりと、レコの頭を撫でる。すっかり赤面している彼の耳は垂れ下がっているが、幸せそうにその目はとろんとしていた。

「ごちそうさま……」
 そのまま数秒間撫でられてるうちに、レコは弁当を食べ終わった。すぐに蓋を閉じて、やはり布に包み始める。
「ね……また作ってきても、いい?」
「ああ、もちろん」
布に包んでいる最中遠慮がちな様子で提案してくる彼に、メトは快く応じた。二人の時間が取れて、おいしい弁当も付いてくるというならば、どこに断る理由があるだろうか。
「ありがと、メト……あ」
「ん?」
 何かを発見したのか、レコが身を乗り出してメトの顔をまじまじと覗き込んできた。
互いの顔が近づいてどことなく恥ずかしいのだが、レコはそれよりも自分の顔面が気になるようだ。
「ほっぺた……ご飯ついてる……ん」
顔を触れ合うほどまで接近させると、唐突にメトの頬を舐めた。
「わ……」
「子供なんだから……こういうとこ」
 急な行為にびっくりするメトを尻目に、レコははにかんだように笑う。その顔を見ては抗議する声も出ず、赤くなってメトは黙りこくってしまった。
「でも……そういうところも、好き」
 小さく、彼にだけ聞こえる声でそう言うと、そっと上体を彼の肩に預けてレコは目を閉じた。ごく近くに居る彼の体温と匂いが、心を落ち着かせる。
「ば、バカ……」
憎まれ口を叩きながらも、合わせてメトはその小さな肩に手を回し、傍らの頭に鼻を近づけてみた。シャンプーのいい香りに混じって、日向の匂い、そして、ちょっと汗のにおい。
 いつもだったら人目を気にしてこんなことをしないけど、二人のベンチは位置的に丁度屋上に繋がるドアの建物の影で、あまり見られることが無かった。

「め……」
「え? なんだよ?」
 目を閉じたまま、レコの口から呟きが漏れた。何事かと聞き返すも、返事は無い。どうやら、眠っているらしい。
「眠っちゃった……? まぁ、いいか」
なるべく体を動かさないようにレコを気遣い、空いているもう片方の手でその頭を撫でる。
「メト……」
「……?」
寝言が自分のことを言っていると気づいた時、レコの目じりに雫が浮かび、こぼれた。
「何か、夢見てるのかなあ……」
そっと、目元の雫を指に取り、すぐに毛に染み込んで消えていったそれを指ごと舐める。レコの隣には自分がいることを、夢の中の彼に伝えるように。


……しょっぱいや


ジリリリリリリ……
 予鈴が鳴った。あと5分すると午後の授業が始まる。当然慌しく屋上に残っていた人々も自分の教室に戻っていく。
 しかし、寄りかかったままレコは目を覚まさない。焦りを覚えて少しほっぺたをつついたりするメトを尻目に、屋上はがらんと静まり返り、代わりに階下の教室からざわめきが増え始めた。
「おい……レコ、起きろよ」
無理にがくがくと揺さぶって起こすのは本意ではないが、かといって起こさないわけにもいかず、困りながらも肩を揺らして起きるように促すが……
「んにゃ……」
レコは寝ぼけた声を上げるだけで、目を覚ますような気配は一向に現れない。
「ったく……起きろって!」
 業を煮やしもう少し強い力で揺さぶっていると、ふとあることに気付いた。
(……誰も、居ない……)
隣には、未だに眠りの世界に落ちているレコ。周囲に人影はない。つまり……
「二人っきり……」
呆然と口に出したその言葉の意味を確認すると、自然胸が高鳴った。ドキドキしながら自分の体をベンチからどかし、レコの体をゆっくりと横たえた。

「レ、レコ……」
 ごくっと喉を鳴らし、横たわった彼の上半身に手を伸ばす。一瞬だけ、学校で行為をすることに抵抗を覚えたが、もう止まらない。
 二人は初めて体を重ねてからと言うもの、レコの家で遊ぶ度に行為をしてきた。しかしここ2週間ほどは様々な諸事情により、することが出来なかったのだ。その間溜まって悶々としていた彼が、自分の意思で止められるはずも無かった。
(2週間も我慢したんだし……)
 そう自分に言い聞かせ、メトは手慣れた様子で彼のシャツのボタンを外していく。そっと開くと中の毛並みの綺麗なレコの体が目に入ってきた。
「ハッ……ハッ……ハァ……」
 興奮して荒い息を吐き出しながら、お腹の毛皮に顔を埋めるメト。そのまま彼の匂いを吸い込むように呼吸を繰り返し、手はその乳首をこね回す。
「すーはー……すーはー……」
「ふぁ……ん。 メ、と……」
 眠っていても感じているのかレコは艶っぽい声をあげる。顔もどこと無く悩ましげにゆがみ、子供ながら色気を発しているようだ。
「レコ……んっ……ふむっ……」
 彼の甘い喘ぎ声を聞きながら、夢中になってメトはすでに硬くなった乳首に舌を這わせて舐め上げた。
「んぁ……はぁん……」
「はぁっ……んむ……」
 序々にレコの吐息は荒くなり、催促するかのように腕をメトの頭に回す。彼もそれに答えて吸い上げたり、舌で押しつぶしたりを繰り返して刺激を与え続けた。
(このまま中に入れてもいいよな……)
 そんなことを考えながら乳首を舐め続け、片手でレコのズボンを下ろそうとしたそのとき、彼の増長していく行為を止めるかのように、始業ベルが鳴り響いた。
キーンコーンカーンコーン……
「っ……び、びっくりしたぁ……」
 一瞬誰かに見つかったのかも、と思って空を仰いだが、ただ音が鳴っただけとメトは認識し、再びレコの体に顔を向ける。
が、
「ふにゃ……あ?」
「あ……」
 今の音で目が覚めたのか、レコがまぶたを持ち上げ、二人の目が合った。
「……」
「……」
 寝ぼけてトロンとした目と、性欲むき出しの野獣の目がぶつかり合い、急速に意識は覚醒していく。状況を理解するのに、時間はかからなかった。
(胸が気持ちいいと思ったら、メトが僕の腕の中で……舐めてた? ……ここ、学校?)
「が、学校!? ちょ、メト……! 何してんの!?」
 完全に気が付いたレコがあわててメトの体を押し除け、上半身を起こす。いきなり押しのけられてメトはバランスを崩し、床にしりもちをついてしまう。
「わった……っと」
「ば、バカバカバカ! こ、こんなとこで何考えてんの!?」
 体勢を崩している彼に、当たり前だが罵声を浴びせかけるレコ。立ち上がってシャツを直そうとすると、体勢を立て直して立ち上がったメトに腕を掴まれた。
「や、ちょっと……ダメだよ! 人が来ちゃう……!」
「だ、大丈夫だって、もう授業始まっちゃってるから人なんて来ないって……」
「始まってるならなおさらこんなこと……んむっ」
 メトはさらに抗議の声を上げようとするレコの口を自分の口でふさぎ、左腕で強引に抱き寄せると、右手で彼の頭を固定した。
「んーっ! ふむっ!」
「ん……んん……」
 恥ずかしさにぎゅっと目をつぶって声にならない抗議をするレコ。必死に体を離そうと身をよじるが、舌が歯を割ってぴちゃぴちゃと口腔の中で淫らな音を立てるたびに抵抗の意識は薄れ、代わりに興奮を高める。
「ん……ふぅ、うっ」
やがてレコは静かにキスを受け入れ、抵抗をしていた腕をメトの胴に回して抱き返す。しばらくこうしてなかったな、と考えながら久しぶりに全身で感じる彼をいとおしく思った。
「ふ……はっ」
「ん……ぷはっ」
 互いの顔を離すと、唾液が糸を引いて間に落ち、互いの服に少し付着した。抱き合ったままで、顔を離したレコは潤んだ瞳でごく近い距離の彼を見る。まだ、足りないと言っているようにその目は見えた。
「エッチ……こ、ここじゃなくても今日、帰ったら……しても、いい、のに」
「だ、だって……お前が可愛すぎて、我慢できなかったんだよ」
「……バカ」
 真っ赤になってそっぽ向いた自分の股間を、メトの硬くなったモノが我慢できないと言う言葉を肯定するように圧迫している。こんなところでこんなに硬くして……と思ったが、自分のモノも硬くなっていることに気付くと、何も言えずにさらに恥ずかしくなった。

「なぁ、いいだろ……?」
「ここじゃ……ダメだよ。 家まで、待てないの?」
「う、うん……ほら……」
 体を離して困った顔をするレコに、メトは自分のモノを取り出して見せた。
「わ……こ、こんなところで出さないでよ……恥ずかしいなぁ」
 既に赤く張り詰めたそれを見せられて、また耳を真っ赤に染めてしまうレコ。
「仕方ないじゃんか……お前が欲しくて……」
「……しょうがないんだから、もう……」
 メトも耳を真っ赤にしながらこちらを見ているのに気付き、苦笑をもらしてレコはしゃがむと、彼のそれに顔を寄せた。
「口で……我慢してよね」
「うん……くぅっ……!」
 少し嬉しそうに彼のモノを手のひらで優しく包み込むと、先端を口の中に含む。思わずメトは高い声を上げ、尻尾が跳ね上がって体中に快感が走ったことを示した。
「ふ……ん、はっ……」
「う……」
 ざらざらの舌が先端を舐め上げるたび、こらえきれずに腰が震えてしまう。久しぶりにレコに舐めさせている、と言う悦びからか、モノからはすぐさま先走りがあふれ出す。
「んっ……出てきた……気持ち、いい?」
 竿を扱き、片手は袋をいじりながら、上目遣いにレコが聞いてきた。聞かずとも分かっているだろうに、こうして聞く彼の顔はどこかいたずらっ子のようだ。
「あ、ああ……もっと……続けて」
「うん……する……ふぐっ」
 扱いていた手を離すと、今度は深く銜え込んで来た。とは言っても、小さい口では根元まで銜えることは出来ないのだが。
「うっあっ……」
 温かい口腔に半分ぐらい自分のそれが埋まり、口の中の粘膜はまるで独立した生き物のようにモノに絡み付いてきて、レコが顔を動かすたびにちゅぷちゅぷといやらしい水音が響く。
 溜めていた事もあって、敏感になっていたそれはすぐさま絶頂に届かんばかりに張り詰め、先走りをますますあふれさせていく。
「んふふ……っ」
「うぁっ!」
 嬉しそうに裏筋を舐め上げるレコの前で、メトは顔をを逸らして激しく反応を返した。
「メトの気持ちいいところだよね……いっぱいお汁が出てくる……」
 恍惚として執拗にレコはそこを舐め上げ、溝を刺激して攻め立てる。そのたびにびくっびくっとモノは震え、先走りはぽたぽたとあごを伝って落ちていく。
「ぐっ……うっ、気持ちいい……」
 もっと彼にしてもらいたくて、無意識にメトの両手はレコの頭に添えられる。彼の口をそのまま、性欲のはけ口とするために。
「ふっ……ふっ……ん」
 そんなメトの気持ちを知ってか知らずか、徐々に興奮が高まってきたレコは銜えながら激しく顔を前後に動かし、さらに刺激を与える。
「あ……あっ……ああ……っ!」
 快感に全身を震わせて、メトは悲鳴にも似た快感の叫びを上げた。モノに神経と意識が集中し、体の最奥から性欲の塊がこみ上げてくる感覚。ぞくぞくと背中の毛が逆立ち、尻尾には電流が走ったかのように一直線に立ち上がる。
「で……るっ!」
 快感に耐え切れず、腰を突き出して口内を深く犯した瞬間、絶頂は訪れた。大きく跳ねたモノから次々と精が噴出し、メトの手はそれをすべて飲み込ませるように頭をしっかりと押さえている。
「んん……っ! ん、んぅん……」
 喉の奥にモノが突っ込まれたと思ったら、続けざまに熱い精が洪水のように押し寄せて、当然レコはむせそうになったものの、すぐに驚いたように見開いていた目をとろんとさせると飲み下していった。
「うっあっ……はぅ……」
「ぷは……いっぱい、出たね……えへへ……」
 全て出し終えると両手を離し、眼下を見ると、いたずらっぽく笑う彼と目があった。口元から収まりきらなかった白い液が伝い、地面に落ちるその姿は、子供とは思えない色気があり、とても扇情的だ。
「ご、ごめ……苦しかったか?」
「ううん、だいじょぶだよ。 すっきりしたでしょ?」
「あ、ああ……わ、悪い」
 出し終えたモノの前に顔を寄せたまま、レコは笑顔で答えてきた。エッチな意識が少し薄れた今、この状態ではどうにも気恥ずかしく、モノを離そうと思ったが両足を彼が掴んでいることに気付く。
「……レコ? ふわっ!」
出し終えて縮んでいたそれをいきなり口に含まれて、メトは情けなく声を上げてしまった。
「きれいにしてあげる……」
「ちょっ……まっ、うっああ―――!」
 白い液がたれたままのモノにレコは隅々まで舌を絡め、先走りと唾液と精液が混じった液を舐め取っていく。イったばかりで敏感になっているそれからはくすぐったいようなむずがゆいような快感ともつかぬ感覚がほとばしり、味わったことのないその感覚にメトは声にならない悲鳴を上げた。
「ん……ふ……」
 じゅるじゅると淫らな音を鳴らし、銜えたまま奥に残った精を吸い取ろうとするレコ。貪欲にその口は精を求め、モノを攻め立てる。
「あ、だ……やめ……!」
 体の奥から吸い取られる感覚に、股間に再び血が集まってくる。出してから1分も経ってないはずなのに、出したらいつもだったら拭くだけなのに。
「あは、メト……またかたぁい……」
「れ、レコ……ど、どうかしたのか……?」
 口の中で大きくなったことに気付き、レコは口を離して嬉しそうに硬くなったモノを見つめる。そのいつもよりエッチな様子に驚いて、(勃てたままだが)不思議そうにメトはたずねた。明らかに変だ。これはいつものレコじゃない。
「わかんないけど、おちんちん見てたら……体が熱くって……」
 見上げるレコの目は熱く潤んでとろんとしている。耳は赤く染まって垂れ、まるで熱でもあるかのようだ。
「し、したい……のか?」
「……うん」
 視線を逸らしながらも、確かにうなずく。かすかに笑って見えたのは気のせいじゃないだろう。
「お前……ここじゃ嫌だって」
「……今はその、体が熱くて、したいの……」
 恥ずかしさに耐えながらも、言い切るレコの態度はいつもより積極的で、驚きながらメトは目をぱちくりさせた。が、意地悪な笑みを浮かべると、しゃがみこんでレコの目線とあわせる。
「お前も、エッチじゃんか……」
「にゃ……う……」
「……そこに手かけて、お尻こっちに向けて」
 何も言い返せず、今にも泣きそうなほど瞳を潤ませるレコの頭をくしゃくしゃと撫でてやると、メトはベンチの背もたれに手を着くように指示する。
―――ここで食べないのは据え膳食わぬはなんとやら、だし?
「うん……こう?」
 はにかんだ笑顔を見せて立ち上がったレコはすぐに言われたとおりの体勢になり、お尻をメトに向ける。これでいいのかとメトのほうを向きながら。
「そう……脱がすよ?」
「あっ、は、ずかしい……」
 ぺろっとハーフパンツを下着ごと膝まで脱がされ、やや小ぶりなレコのお尻があらわになる。恥ずかしいと言いながらも、普段であれば秘所を見せないように垂れ下がっているはずの尻尾はぴんと立っていて、きれいな後ろの穴も、既に硬くなっているモノの袋も全て見えていた。
「その割には……ここ、おっきいな? お尻もひくひくしてるし」
後ろから手を回し、くりくりとレコのモノの先端を刺激し、ついでに左手は秘所の表面を指でなぞる。
「んっ! にゃぁ……っ!」
 甲高い声を上げ、レコは体を硬直させてぶるぶると体を震わせた。敏感な部分を2箇所同時に弄られたレコの体には、異なる場所からの快楽が一つとなって次々と押し寄せ、だんだん頭が白く染まっていく。
「お……もうさきっちょからあふれてきたじゃん……後ろも、柔らかくなってきたし」
 モノは手で扱きつつ、溝をなぞっていた指を穴に少しずつ埋めていく。
「あ、あ、んみぃ……め、と……おかしくなっちゃうぅ」
 恥ずかしいところを触られて、僕感じてる……そう思うだけで興奮はますます高まり、快楽を求めて腰をメトに押し付ける。
「もっとしてやるよ……」
 そう言うと、今まで扱いていた右手で彼の腰を掴みながら、左手で抜き差しを始めるメト。
ぐぷっ……ぐぷっ……
「あぁっ……!」
 指が抜かれるたびに穴は呼吸するように開き、差し込まれるたびに異物を排出するためにきゅうと締まる。その締め付けはまるで指を食いちぎらんばかりだ。
「すげ……指、一本なのにきつ……」
「やぁ、言わないで……」
 恥ずかしそうに振り向いたレコの視界には自分のお尻がどうなっているのか見えない。ただ、快楽だけはそこから確実に伝ってきて、絶え間なく自分のモノから先走りが垂れているのは感じられた。
「二本目……」
 ずぶ……ずぶぶぶ……
 2本目の指がレコのお尻にゆっくりと入っていく。1本目のときよりこなれていたためか、その締め付けにもかかわらず秘所は比較的容易に指を受け入れ、穴を掻き分けて太いものが入ってくるような感覚にレコは頭を振り乱した。
「んあぁ! だぁめぇ……!」
「ダメって……感じてるだろ。 どこが嫌なんだよ」
 意地悪く言いつつ、二本の指でぐにぐにと後ろをかき回すメト。秘所内の分泌液はますます漏れ出してメトの二本の指を汚し、抜き差しのたびに少しずつ表も濡らしていく。
 本当はレコが何を求めているかなんて分かっているけど、彼の可愛い反応が見たくてわざといじめていた。
「やぁ……い、れてよぉ……」
「何を?」
「んにいぃっ!」
 ぐにっ
 急に穴の入り口を広げんと指が開かれ、レコは目を見開いてビクビク体を痙攣させる。
「う……ふぅ……め、メトの、おちんちん……」
「これを……どこに?」
 指を抜いて穴の近くに先ほどと変わらないほど硬くなったモノをあてがい、腸液にまみれた秘所付近をぬるぬるとこする。
「ふぁっ……! や、こすっちゃ……いじわるぅ……」
「言わなきゃどこに入れるのか分かんないなあー?」
 とぼけた声を出しながらモノの先端は入り口をつんつんとつつくばかりで入ってくる気配は無い。一言言えばいいのは分かっているが、恥ずかしさが言葉を押し留めていた。
 しかしそれも、こうもじらされては我慢も限界と言うものだ。
「にゃうぅ……僕の、お尻に……い、入れて……」
「へへ……可愛いよ、レコ」
「にゃ……あっ!」
ずぶ……ずぶ……ずぶ……
 少し泣きが入ったレコの尻尾を撫でながら、腰を突き出すメト。指よりも太いため、傷つけないように優しく、しかし深く入れていく。
「あ……あ……は、いって……きたぁ……!」
 自分の中に熱いメトのモノが入ってくる感覚に悦びの声を上げながら、レコは体を小刻みに痙攣させた。根元まで埋まると、奥を刺激されて尻尾がビクッと跳ね上がり、次いで垂れ下がる。
「うっ……すげ……いつもと違う……?」
 実際そうそう感覚が変わるわけではないだろうが、本当ならこんなエッチなことするはずの無い学校でしていることが興奮を煽り、それが感覚を鋭敏にしているのだろう。
 しかし、そんな難しいことが分かるようなメトではなく、挿入したことによって収まっていた2週間分の性欲が再び湧きあがってきて、激しく突きたい欲求にかられた。
 入れるまで我慢できなかったのはレコだが、入れてから我慢できないのは、メトだ。
「は……動くよ……!」
「え……? んにゃぁっ!」
ずっ・・・ぱんっぱんっぱんっ!
 挿入れた時の優しさはどこへやら、メトは激しく腰を打ち据える。軽い破裂音のような音が何度も響き、この音に誰か気付いたらどうしよう、とレコは恥ずかしくなった。
「ハア……ハァッ……レコ……!」
「やぁ、激しっ……!」
 その激しい動きに、ベンチを掴む手がずり落ちそうになるが、必死に体勢を崩さないように耐える。やがて腰を掴んで抽送を繰り返していたメトは、レコの背中を覆いかぶさるように抱きしめ、腰だけを動かし始めた。その動きはまさに野獣そのものと言っても過言ではない。
「れこぉ……!」
「め、ト……優しく……にゃあっ!」
ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ!
「ごめっ……止まんない……!」
「んぁあんっ!!」
 腰を振るたび激しさにレコが上げる悲鳴も、逆にメトの嗜虐心に火をつけ、行為を加速させるだけで願いは通じない。
(2週間分も溜めると野獣みたいになっちゃうんだな……)
 目の前に泣きそうなほどに喘ぐ彼をミながら、どこか冷静な心でメトはそんなことを考えた。
ぱんっぱんっ! ぐっちゅっぐっちゅっぐっちゅ!
「あ、はぁ……! だめぇ、激しすぎて……おかしく……んぁっ!」
 激しくされることを嫌がっていても、感じていないわけではなく、悲鳴はだんだんと艶っぽさを増して喘ぎ声となり、分泌される腸液によって打ちつけられる音には水音が混じり始める。
「はぁっ! はぁっはぁっ……!!」
「メト……僕……ぼくぅっ!」
 すぐ下のベンチには、張り詰めて震えているレコのモノから分泌された先走りがぱたぱたと溜まり、ベンチの隙間から落ちて地面を濡らしていった。あっという間に上り詰めていくレコの絶頂が近いことを分かっているのか、それともただ性欲のままに腰を振っているのか、メトの攻めは一向に衰えることがない。
「あ、だめ……でちゃうぅっ!!」
「う……っ締まる……!」
 奥を突かれて、絶叫と共に背をのげ反らしたレコのモノから、びゅくんびゅくんと濃い白濁液が飛び散りベンチを汚す。しかし、メトは絶頂にきつく締まった秘所の中で放出せず、動きを止めただけだった。
「あっ……あっ……あはぁ……っ」
 二度、三度とモノは跳ね、ぴゅるぴゅるあふれ出た精も徐々に収まり、役割を果たしたかのようにそれは垂れ下がる。
「レコ……ずるいよ、一人だけでイッちゃって……」
「ごめ、メト……でも、激しくて……やぁん!」
 耳元でささやいてきたメトに抗議しようとして、いきなり腰を抱えて体勢を回転させられたレコは高い声で鳴く。
イッたばかりでもっと刺激を与えられたら、壊れちゃいそう……ぼーっとする頭でレコはうっすらとそんなことを考えていたが、どこかでそれを望んでいる自分がいることは気付かなかった。
「これなら……俺の顔も見えるだろ?」
「あっ、ばかぁ……」
 そんな罵声は聞き入れず、メトはベンチにレコの上半身を倒し、引っかかっていたハーフパンツを器用に脱がせると足を開かせる。その間に自分の体を差し入れると、まるでベンチに叩きつけるように彼は腰を動かし始めた。
ずっちゅ……ぐっちゅ……ぬっちゅ……
「あぁっ……ん……メト……!」
 理性が飛びそうでもしっかりと腕はメトの胴に回し、ごく近い彼の頬をレコは甘えるように舐める。そうしないと、この快楽に自分の意識が飛んでしまいそうで少し怖かったから。すがりつくものが欲しかった。
「レコ……すごい気持いい……」
「んんっ……! 僕も、気持ちいいよぉ……!」
 ぬるぬるになった秘所を容赦なく肉棒は貫き、中をえぐっていく。イったことで敏感になっているのか、抜き差しされているだけでもレコのモノは震え、まだ奥に残っていた精があふれている。
「イきそうだ……中に、出していいか……?」
「う……ん。 メトの熱いのっ、ちょうだい……にゃあっ!」
 恍惚の表情でこちらに振り返りながら、精を求めるレコに、一瞬どきっとしながらも、メトは絶頂に向けて腰の動きを早めた。合わせてレコの足は胴体に絡み、ぎゅっと抱きしめる力を強めて彼の精を受け止めようと備える。
ずっちゅずっちゅずっちゅずっちゅ……!
 いやらしい音が響き渡り、二人は再び絶頂の感覚を覚える。半勃ち状態になったレコのモノも、絶頂を間近にしてさらに硬く膨張しているメトのモノも、小刻みに震えて次々と粘液を出していた。
「あぁ……いぃ……僕、お尻で、お尻だけでまたっ!」
「レコ、俺……俺っ! いく……っ!!」
 最後に思いっきり深く突くと、メトはレコの胸に顔を埋め、強く抱きしめる。そして今日二度目の絶頂を、レコの中で解き放った。
どくっ! どくっ! どくどくっ!
「あっ……うにゃぁあああっ!!」
 白く熱い濁流が自分の中を満たしていく……その感覚にレコはひときわ甲高い声を上げる。その彼のモノからも、先ほどよりは少ないが濃い白濁液が飛び出して、顔やおなかを白く汚した。

「はぁ、はぁ……」
 肩で息をする自分の目の前で、レコは虚ろな瞳を空に漂わせながらベンチに寄りかかっている。顔やお腹にはレコの精が、シャツにも1回目に出したものが、お尻からは自分が大量に放ったそれがあふれ出してベンチを汚している。淫靡な姿だが、今はやりすぎたかな……と思えなくも無い。
「……レコ、すげえ汚れちゃったな……」
「うん……」
 一応声は聞こえているのか、レコは返事をしてくるものの、それは生返事に近い。
 こちらを見ようとしないのは、別に怒っているわけじゃないだろうケド。多分。
「ごめん、その……」
「んーん。 僕も、したかった、みたいだから……」
 勢いに任せて最後までしちゃったことにちょっと罪悪感。謝ろうとしたところでレコが此方を向き、はにかんだ笑みを見せた。
「でも……体とかきれいにするまでは、戻れないね」
「そうだな……ははは」
「うにゃん……」
 改めて自分の体を見直し、苦笑するレコ。そんな彼がいとおしくて、メトは頭を撫でてやる。汁にまみれながらも嬉しそうに尻尾を振るレコだったが、そのうちにまた眠くなってきたのか、大きく口を開けた。
「ふぁ……ねむ……」
「まずはきれいにするのが先だろ?」
「……うん」
 あくびするレコに向かって、今度はメトが苦笑する番だった。その通りだね、と言わんばかりにつられてレコも笑う。
「でも、拭くものが無いとな……」
 タオルなど持ってきているはずも無く。しかし少なくとも、ベンチに付着したのはふき取らないと、後がヤバイ。
「大丈夫だよ、ハーフパンツのポケットに……」
「あ、ホントだ」
 が、そこは抜かりなし。レコはしっかりとティッシュを用意していた。本当はこんなことに使うはずじゃあなかっただろうけど、彼がしっかり者で助かった。

「ところでさ、さっきレコが寝てたとき……ちょっと泣いてたんだけど、どうかした?」
「え……な、泣いてたの、僕?」
 レコの体をぬらしたティッシュで拭きながら、メトはうんうんとうなずく。途端、気持よさそうだった顔がばつの悪い表情になって、うつむいてしまった。
「悪い夢?」
「え、えっと……その、メトと、離れる夢だったから……多分」
 泣いたんだと思う、と続けたつもりだが、消え入るような声のためメトには届かなかった。しかし、どういうことなのか悟るにはその言葉だけで十分である。
「大丈夫だって、俺はここに居るからさ」
「……ありがと……」
 ぐすっと鼻を鳴らし、レコは目元をぬぐう。メトが友達で、メトを好きになって……本当に良かった。
「好きだよ……レコ」
「んっ、バカ、恥ずかしいよ……」
 ついばむように軽くキスされて、照れ隠しにレコは本日何度目かになる罵倒の言葉を口にする。
 恥ずかしいって、上半身のシャツがはだけて、下半身裸の今の状態のほうがよっぽど恥ずかしいんじゃないかとメトは思ったがそこは口に出さず、ぎゅっと抱きしめてやった。
「メト……」
 憎まれ口を叩いたものの、抱きしめられているこの状態が嬉しくて、パーカーを通して温もりを感じようと自分の頬をこすりつける。
「また……ここでしていいか?」
「……それはダメ」
「ちぇ」
 あっさりと答えるレコと残念そうなメト。やがて周りと体を綺麗にした二人は、次の授業までそこで一寝入りするのだった……。

 ちなみに後日、メトの強引さに負けて何回かしてしまうことになることを、レコは……なんとなく予想していましたとさ。







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